研究の概要
 
木材化学研究室では、植物バイオマスの”化学”を研究の対象としています。名前を「木材化学」としているのは、バイオマスの圧倒的部分が樹木の細胞壁として存在するからです。
 
木材化学研究室では、大きく分けて二つのテーマを中心に据えて研究を行っています。一つは、植物バイオマス有効利用の前提となる「植物細胞壁成分の化学構造の解明」で、もう一つが、植物バイオマスの利用過程を対象とする「植物細胞壁成分の化学的反応性の解析」です。
 
「植物細胞壁成分の化学構造の解明」では、主要三成分であるセルロース・ヘミセルロース・リグニンのうち、特に不明な点が多いリグニンの化学構造解析に力を入れています。リグニンは、フェニルプロパン単位がランダムにカップリングしてできた高分子で、非常に複雑な構造をしています。また、部位によって構造が異なることが知られています。どの部位にどのような構造がどれだけ存在するかを、定量的に解明することが目標です。
 
植物バイオマスを利用する場合、化学的処理は最も頻繁に行われる方法の一つです。「植物細胞壁成分の化学的反応性の解析」では、細胞壁構成成分である多糖類(セルロース・ヘミセルロース)とリグニンが、様々な化学処理過程でどう反応するかを詳しく解析することが目的です。中でも、現存する植物バイオマスの化学的利用法として最大の、化学パルプ製造過程における反応に最も力を入れています。また、この化学パルプ製造過程に関する研究は、環境低負荷プロセスの構築も包含するため、環境化学的な側面も持っています。
 
 
上記のように、木材化学研究室では、リグニン化学を中心として研究を進めています。リグニンの詳細な化学構造は未だに明らかではありませんが、模式的には下図のように書けると考えられています。リグニンが細胞壁に沈着することを木化と言いますが、この字の通り、樹木が示す性質の多くは、リグニンが細胞壁に存在することによって発現します。
 
樹木は地球上の炭素循環過程において二酸化炭素を吸収し、これを炭素源として有機物を合成しています。リグニンもこの過程で合成されますが、この炭素循環過程における炭素固定という意味では、リグニンが最大の役割を担っています。このことからも、リグニン化学の研究には大きな意義があると考えています。
地球上の炭素循環過程におけるリグニンの役割の詳細については、こちらをご覧下さい。
出典:紙パ技協誌,64 (10), 1230-1232 (2010)
研究テーマ
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